2026年9月24日木曜日

百条委員会ものがたり⑧~報告書のポイントⅲ

  今回からは、百条委員会報告書からオホーツク紋別空港利用促進協議会、株式会社紋別観光振興公社の不適切、不透明な支出の実態解明に係る部分を、ポイントを絞って紹介します。

◆エージェント対策費(販売奨励金)の流れと支出構造の変化

 紋別市は平成30年度まで東京紋別便の空路維持確保のため、空港利用促進事業として官民でつくるオホーツク紋別空港利用促進協議会(以下、協議会)に6000万円余りを負担金として出資し、協議会はそれを原資に各エージェント(旅行代理店)に対し、ツアー客などの搭乗実績に応じてエージェント対策費(販売奨励金)を支払ってきた。

 この段階までは支出先・使途は明確だった。

 ところが、中島和彦氏が市の観光連携室長に就任した令和元年以降、エージェント対策費の支払い方法が変更された。

 これまでの各エージェントへの直接支払いからANAの搭乗実績表を根拠に1席あたり2500円分を販売奨励金として紋別観光振興公社(以下、公社)へ支払う方式となった。

 その理由は、個人客の増加に対応して、ANAフェスタ券の提供等により個人客利用を促進するためとされていた。

 それに伴い、市の負担金も1億2000万円に増額された。

 さらに中島氏が市役所を退職し公社の副社長に就任した令和3年度からは、中島氏が役員を務める「アジアアクセス社」に対しても協議会から直接エージェント対策費が支出されている。

 さらに令和4年度からは、「アジアアクセス」から中島氏が代表を務める「中島コンサルタント社」に変更されている。

 なぜこのようなことが行われたのか。当時協議会の会長であった宮川前市長は「個人客が増加し、小回りとスピード感のあるアジアアクセス社がよいと説明を受け契約した」「アジアアクセス社が広島に移転したため、東京を拠点にした方が誘客によく、名義を中島コンサルタントに整理することで誰にもわかりやすく、透明性を図る趣旨で進言した」と証言している。

 その結果、この2年間で協議会から中島氏関連会社に支払われたエージェント対策費は8000万円に上る。


◆「再委託禁止」とされていた業務が、なぜ中島氏関連会社  に再委託され、継続されたのか

 協議会と公社との間で締結された覚書では、公社による業務の再委託は禁止されていた。

 にもかかわらず、公社から中島氏関連会社に対し、「PR宣伝費費」「利用促進経費」などの名目で業務の再委託が常態化していた。

 本委員会としても、実際にどのような業務が行われていたのか調査を尽くしたが、その記録も成果物も乏しく実態がつかめない状況であり、使途が不明の状態だった。

 しかし調査の結果、この4年間で公社を通して中島氏関連会社に再委託され支出された金額は2億2200万円を超えることが判明した。

 なぜこんなことが許されたのか。当時の棚橋一直公社社長は具体的な再委託の有無について「私の記憶にないのでわかりません」と証言しているのみで、監督機能の脆弱さが際立つ。

 疑問を持った職員に対し中島氏から「役員のすることに口を出すな」と威圧されたとする証言もある。


◆エージェント対策費の単価設定・予算増額は誰が決めたのか

 当初、エージェント対策費は1席あたり2500円だったが、その後5000円、1万円に増額された。

 この増額について「中島氏が市長に説明して了解を得た」とする担当職員の認識と、「説明を受けた記憶は乏しい」とする宮川前市長の証言が食い違っている。

 他方、議会答弁で宮川前市長は増額について、「コロナ禍での搭乗者確保が図られると判断した」とも述べている、が、会議体での協議記録はない。

 しかし確かなことは、中島氏関連会社はコロナ禍で搭乗者が激減しても、単価の増額と再委託によって、従前に近い収入を得ることができていたことだ。


◆中島氏の役員報酬と搭乗対策委託料との関係

 中島氏は令和4年3月市を退職後、公社の副社長となり、年480万円の役員報酬を得ていた。

 しかしその一方、退職と同時に協議会から「東京紋別便維持・搭乗者対策委託料」として年間1870万円の支給を得ていたのである。

 これは何のか。その金額について宮川前市長の証言がある。「これまでの市の給与相当分1200万円に、札幌便再開に向けた委託料500万円、それに消費税を上乗せした計算で、市の給与を引き継ぐもので、生活費も含めている」

 まさに、市・協議会の資金で補填された、実質的な第2の報酬である。


◆中島氏関連会社にいくら支払われたのか

 本委員会の調査において、公社及び協議会から中島氏関連会社に支払われた金額は4年間で3億3285万円に上る。

 さらに年間130回を超える出張経費(公社のカード決済)、役員報酬や搭乗対策委託料を積算すると4億円規模に達することが判明した。

 それが何に使われたのか。令和7年8月公社に対し、国税当局による税務調査が実施された。その結果、中島氏関連会社に支払われた委託料のほぼ全額が接待交際費と認定された。

 搭乗者対策どころか、市の税金が中島氏らの接待交際費に使われていたのである。

                    (つづく)

2026年9月14日月曜日

百条ものがたり⑦~報告書のポイントⅱ

  百条委員会報告書より(前回から続く)

⑦公募型プロポーザル契約に係る一連の不正行為における  「官製談合防止法第8条」違反に関すること

 「アキラ」との間で避暑地化推進基本計画策定の契約締結を絶対化するため、次のような一連の不正行為が市役所ぐるみで行われた。

●実績のない「アキラ」では一般競争入札では難しいと判断した岩井観光連携室長(当時)は、入札の参加条件に「紋別市内に本店・支店、営業所を置く法人」という内容を加え、紋別市オホーツク交流センター内に「アキラ」の営業所を登記した。これにより事実上「アキラ」以外の入札参加は不可能になった。その後、契約方法は公募型プロポーザルに変更された。

●「アキラ」からの入札参加申請書類が市役所に届いたのは、締め切りを過ぎてのことだった。にもかかわらず、受付印を改ざんし申請書類を受け取ってていた事実が明らかになった。

●入札審査には「アキラ」側による提案書が必要とされていた。しかしその内容を、市側と事前に協議・打ち合わせし、市の意向に沿った内容に修正していた。

●プロポーザル審査会当日、審査会に先立ち、市と「アキラ」とでプレゼンなどのリハーサルを行っていた。

 これら一連の行為は、公務員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律、いわゆる「官製談合防止法第8条」が定める行政手続きの透明性、公正な競争、不正行為の排除を完全に逸脱し、組織ぐるみでひたすらジェイハットと「アキラ」への利益供与に走ったもので、官製談合防止法第8条違反との判断を免れ得ない。


⑧「アキラ」との契約解除(令和4年3月)にも中島氏の関与が疑われ、また、その時点で「基本計画」は何も出来ていなかったこと

 プロポーザル審査会をパスした「アキラ」は10月16日、避暑地化推進基本計画の策定業務を1430万円で市と契約した。

 しかし12月、ジェイハットに国の事業であるGOTOトラベルの不正受給の疑いが浮上したため、業務を一時中断した。(のちに、不正はなかったことが確認されている)

 翌年の2月、宮川前市長と岩井観光連携室長、そして中島紋別観光振興公社副社長(当時)との会談で、突然「アキラ」との契約解除の方針が決まった。

 それは中島氏の意向だとする証言がある。

 さらに不可解なことに、「アキラ」による基本計画策定の業務が、この時点で何も手が付けられていなかったが明らかになったのである。

 あれだけ市職員を追い詰め、逮捕者まで出しながら、結局、市が手にしたのは「白紙の基本計画書」だった。


⑨中島氏への証人尋問に係る経過と対応について

 本事案のカギを握るのは中島氏であり、証人尋問への出頭を要請した。

 しかし、医師の診断書を添付した上で出頭できない旨の申し出があった。

 そこで百条委員会として質問書を作成し、2度にわたり中島宅へ郵送したが、受取人不在で返送されてきた。

 そこで本委員会としては、警察・検察での中島氏の供述調書の内容を適時採用することにした。


⑩理事者はどこまで関与し、その判断と決定はいかになされたのか

 宮川前市長がジェイハット及び「アキラ」をいつ、誰から知らされ、「アキラ」との契約をいつ決定したのか。本事案を考えるうえで、重要なポイントである。

 中島氏によれば、4月の段階で「アキラ」への変更を宮川前市長に伝え、了解を得ていたとしているが、宮川前市長は証人尋問で「記憶にない」と述べている。

 6月に入り正式に「アキラ」との契約を決定する際も、元副市長は宮川前市長の指示を受けたと証言しているが、宮川前市長は元副市長ではなく、岩井氏からその話を聞いたと証言しているものの、岩井氏もまた「それは記憶にない」と証言している。

 このように重大な方針の決定が、組織としての検討・協議もないまま、根拠も責任もあいまいなままなされていた、という事実が明らかになった。


 これら10項目の論点を踏まえ、なぜこのような事態が起こったのか、報告書は次のように結論付けている。

 市役所内のガバナンス(統治能力)の欠如と政策決定過程の不透明性、そしてコンプライアンス(法令順守)に対する著しい軽視だけでなく、中島氏の強大な権限と威圧的な態度、その背後に存在する宮川前市長への忖度ーそれらが物言えない風土、風通しの悪い環境を醸成し、「人による支配」が存在していた。そしてそれを結果的に許してきた理事者の責任は重いと言える。


※次回からは空港関連のポイントを紹介します。