5月の連休に妻と、十勝まで足を延ばしてきました。
十勝には目的がありました。
それは、太平洋沿岸の湖沼をめぐることと、大樹町の旭浜のトーチカ群に出会うことでした。
十勝の太平洋沿岸は十勝海岸湖沼群と呼ばれ、数多くの湖沼と湿地が連続してあります。
豊頃町の長節湖と湧洞湖。大樹町の生花苗湖とホロカヤントー。どこも湿地と泥炭地。農業には不向きの土地を、人は開拓していったのです。
訪れたその日は、どこもひっそりと靄の中にたたずんでいました。きっと夏には、きれいな花々で彩られるのでしょう。
目的のもう一つは旭浜のトーチカ群です。
道端の小さな看板を目印に海岸線に出れば、砂浜にそれはありました。
高さ3・4メートル、幅5・6メートルのコンクリートでできた箱形の無骨な物体。入り口と反対側に小窓。コンクリートの厚さが50センチほどあり、人が2・3人入るのが精いっぱいの狭さ。それが海岸線の砂浜にポツンポツンと点在しています。
トーチカ。それはロシア語で点という意味です。
太平洋戦争末期、大樹町周辺の浜がアメリカ軍の上陸有力地点とされ、1944年に約40基、地元住民も動員され造成されたといいます。まさに点のように配置された武装陣地です。その小窓から見えぬ敵に銃を構えていたのです。
結局、このトーチカは直接使われることはありませんでしたが、1945年7月には、この地も空襲に見舞われ、十勝管内で60人、全道で死者2000人を超える被害者を出しています。
今は何も語らず、波風にさらされ、時間の経過だけを残すトーチカ。その冷たいコンクリートに触れると、戦争のむなしさと愚かさが胸ににじんできます。
そして、いつまでも残しておきたい戦争遺構です。
このコース、連休とはいえ本当に人の少ない場所ばかり。それもまた、一興ということで・・・
(「オホーツク民報」5月26日付 『野村淳一のかけある記』より)
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