2015年6月4日木曜日

「地方創生」って何のこと

 5月16日、オホーツク自治体研究所主催の講演会に参加してきました。

 テーマは「地方創生」。講師は島根大学名誉教授の保母武彦氏。講演のタイトルは「オホーツク地域の産業・雇用をどう再生するかー農・漁と食、医療・福祉、自然エネルギーを活かした内発的発展の道を探るー」というもの。

 内容が多岐にわたり、最後は尻切れた感じで、少々残念。

 それにしても政府は、「人口減少」「地方消滅」をキャッチフレーズに、次々と手を打ってきている。

 「まち・ひと・しごと創生法」に基づいて、「地方創生」を掲げた5か年計画である「総合戦略」と人口の将来展望を示す長期ビジョンを昨年12月に決定した。

 総合戦略では、人口減少など地方衰退の原因について、「府省庁・制度ごとの縦割り構造」「地域特性を考慮しない全国一律の手法」「効果検証を伴わないバラマキ」などと総括している。

 しかし、地方衰退の原因は、輸入自由化などによる農林水産業つぶしであり、大店法廃止による商店街つぶしであり、社会保障の切り捨てによる「医療崩壊」「介護難民」の出現であり、地方交付税を削減し「平成の大合併」を押し付けた、まさに自治体つぶしではないのか。

 その反省もなく、「地方創生」といっても白々しく聞こえる。

 総合戦略には、「地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」として、創業支援や企業の地方移転、地方移住の促進、「若い世代の経済的安定」、子育て支援などを掲げている。

 しかしそれなのに、地域経済を壊すTPPを推進し、いっそう低賃金の不安定雇用を拡大する労働者派遣法を改悪しようとし、子育て支援と言いながら地元で安心して子どもを産むことさえできない現状のままなのは、なぜか。

 国はまず自ら、それらをあらため改善することが先決であり、それなくして地方の再生はない。

 地方はこれまでも、基本的に、必死に住民の利益を守り、福祉の向上と経済の活性化に努力してきた。国の政策にも付き合ってきた。

 それが、「縦割り構造」だっただの、「バラマキ」だっただのと総括されても、何を「いまさら」なのだ。

 それにしても今年度中、場合によっては10月中までに「地方版総合戦略」と「地方人口ビジョン」を策定しなければならないとは、無茶もいいところだ。

 雇用の創出、地方への人の流れ、若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶えるなどの5か年計画の策定は、もちろん簡単ではない。

 どれもまちづくりの中心課題であり、それだけに十分な議論と検証、調査と分析が必要だ。多くの市民の参加も必要であり、議会との協議・連携も重要だ。

 2年、3年かけてもおかしくないテーマだ。

 結局、自治体がいま実施している事業の中から「地方創生」関連事業を選び出して計画をつくるのが精一杯。いったい、何のための、誰のための「地方創生」か。
 
 地方の格差がますます拡大する気配を強く感じる。

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