先日、2本の映画を観てきました。
一つは、「母ー小林多喜二の母の物語」。もう一つは、「この世界の片隅に」
どちらも、あの戦争の時代を生きた人々の生の暮らしを描いた作品です。
それだけに、見終わったあと、切なく胸がつまる思いとともに、どこか現代につながる感じを覚えました。
「母ー小林多喜二の母の物語」は、三浦綾子の小説をもとに、山田火砂子監督がメガホンをにぎり、寺島しのぶさんが小林多喜二の母・セキを演じています。
日本が戦争へと突き進んでいく中、反戦と搾取のない社会を訴えた日本共産党員作家・小林多喜二。
1933年2月20日、特高刑事に逮捕され、築地警察署で拷問を受けて絶命しました。享年29歳でした。
人権抑圧と思想弾圧で猛威をふるった「治安維持法」の犠牲になったのです。
多喜二がなぜ社会運動に目覚め、弾圧にも屈せずペンを握り続けたのか。母・セキの目を通して丹念に描かれています。
そこにあるのは、あくまで子どもを信じぬく力です。
そして、セキは死ぬまで、本当のことを書いただけなのに、なぜあんなむごい殺され方をしなければならないのか、と問い続けます。
セキの手紙が残っています。『ああ、またこの2月の月が来た。本当に、この2月という月が嫌な月。声をいっぱいに泣きたい。どこへ行っても泣かれない。ああ、ラジオで少し助かる。ああ、涙が出る。眼鏡がくもる』
今、安倍政権は『共謀罪』の成立を急いでいます。これはまさに、現代版の「治安維持法」です。
2度と物言えぬ国にさせてはいけないーこの映画は、その意味を私たちに教えています。
「この世界の片隅に」-呉市に嫁いだ「すず」さんを主人公に、激化する戦況の中、ただひたすらに毎日を生き続けた人々の営みを丁寧に、そして優しく描いたアニメーション作品です。原作はこうの史代さん、監督は片淵須直さん。
のんびりおっとりしたすずさん。そのキャラクターが見ていてとても心地いいのです。
戦争が激化するなかでも、そんなすずさんの心に救われます。
ところが大規模な空襲が呉市を襲います。そして、悲劇が起こります。画面が突然、真っ暗になって…。
そして、実家の広島に原爆が投下されます。やがて、敗戦を告げる玉音放送が…。すずさんの叫びと号泣が胸に刺さります。
最後に、ひとりの孤児がすずさんの前に現れて…。
「すず」さんの声は、能年玲奈あらため「のん」が演じてます。それが、またいいのです。
ここに描かれているのは、名もない庶民の営みです。この
世界の片隅で、精一杯、幸せになろうと生きている庶民の暮らしです。
戦争は、それをいとも簡単に奪い去っていきます。
戦争の本質を、教えてくれる作品でもあります。
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