私の出番は少ないと言っても、それなりに緊張するものです。でも、無事終えてホッとしています。
10・11日の二日間の公演でした。
いがらし陽子さん脚本の『望洋~紋別水産加工業界の革命児 波乱の生涯』です。
船上でカニの缶詰を製造する「蟹工船」の実用化を日本で初めて成功した松崎隆一氏。その技術をかわれ紋別に移住し、日本缶詰生販を創業。やがて道内でも屈指の缶詰工場として発展し、水産加工の近代化とともに、紋別の発展にも大きく貢献した人物。この松崎氏をモデルに書き下ろされた作品です。
私の役どころは、当時の紋別町長。缶詰工場の落成式で祝辞を述べるという設定です。一場だけの、一台詞だけの役なのですが、それでもみんなの足を引っ張らないようにと緊張しました。
松崎氏は、プロレタリア作家小林多喜二の小説『蟹工船』に出てくる「鬼監督・浅川」のモデルとも言われている人物です。
劇中で松崎は、その多喜二とも出会い、最後のシーンでは、天国で二人で語り合います。
多喜二「私はあの小説(蟹工船)で、あの時代を書かなければならなかったんです」
松崎「私は、自分を正当化するつもりはありませんし、言い訳もいたしません。ただ、その事があなたの命を縮めたのだとしたら…」
多喜二が官憲に捕えられ虐殺された背景が滲み、松崎の苦悩が心に沁みるシーンです。
それにしてもやはり出番の多い役者さんは大変です。本番ぎりぎりまで稽古を重ね、それでも不安な部分があっても、本番の舞台ではそれなりに演じ切る。袖で見ていて、はらはらしたり感心したり。
そして幕が下がり、「やったー」「おわったー」の歓声。ハイタッチにも力がこもります。この時の達成感がたまらないんです。
今回は、北海道演劇祭の一環としての上演で、道内各地から6劇団が紋別に集結し、それぞれに腕を競い合い、交流を深めました。
私も、札幌の「劇団新劇場」の作品「高き彼物(かのもの)」を見ました。
ところで、「劇団海鳴り」も再来年で結成50周年だと知りました。
私と「海鳴り」さんとの付き合いも長くなりました。出させていただいた芝居も7・8本になります。
「常紋トンネル」「ああ野麦峠」「石川一座放浪記」…
どれもこれも、良い思い出です。あの時の緊張感は今でもあざやかによみがえります。
一つのことをみんなで成し遂げる。そんな貴重な経験を味わうことができました。
ほっとしながらも、なんだか少し心さびしさも感じています。
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